甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「昔の話。今、あいつは新婚さんよ」
「えー、どうしていい男には、彼女や奥さんがいるんですかね」
そう嘆くのは、受付の結城さんだ。
「ほんと。ここにもイケメンに愛されてる幸せ女がいるし」
怖っと、身をすくめる。
「ここ、初めてなんですよね。お料理何がおすすめですか?」
「なんでも美味しいわよ。煮込みハンバーグと、ステーキ肉は、いいの出してるわよ」
それぞれ決まったところへ、綺麗な女性がやってきた。
「朱音さん、いらっしゃい」
「…詩織さん、お店出てるの?」
「そうなの。まだまだだけど。ご注文決まったかしら?」
「あっ、ハンバーグのコース2つと、サーロインステーキのコース2つに、お勧めの赤ワイン一本お願い」
「先にワインお待ちして大丈夫?」
「はい。お願いします」
「お義父さんに、ワイン選んでもらってくるわね」
彼女がいなくなると、はぁっ…とため息をつく朱音さんに、皆、顔を見合わせてしまう。
「綺麗な人でしょ。わかってるのよ。だけどね…なかなか諦めつかないのよ。だから、今の彼とも、一歩踏み出せないのよね」
なるほど、朱音さんの年齢で結婚しない理由は、いろいろ訳ありなのだと納得したのだ。