甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

「昔の話。今、あいつは新婚さんよ」

「えー、どうしていい男には、彼女や奥さんがいるんですかね」

そう嘆くのは、受付の結城さんだ。

「ほんと。ここにもイケメンに愛されてる幸せ女がいるし」

怖っと、身をすくめる。

「ここ、初めてなんですよね。お料理何がおすすめですか?」

「なんでも美味しいわよ。煮込みハンバーグと、ステーキ肉は、いいの出してるわよ」

それぞれ決まったところへ、綺麗な女性がやってきた。

「朱音さん、いらっしゃい」

「…詩織さん、お店出てるの?」

「そうなの。まだまだだけど。ご注文決まったかしら?」

「あっ、ハンバーグのコース2つと、サーロインステーキのコース2つに、お勧めの赤ワイン一本お願い」

「先にワインお待ちして大丈夫?」

「はい。お願いします」

「お義父さんに、ワイン選んでもらってくるわね」

彼女がいなくなると、はぁっ…とため息をつく朱音さんに、皆、顔を見合わせてしまう。

「綺麗な人でしょ。わかってるのよ。だけどね…なかなか諦めつかないのよ。だから、今の彼とも、一歩踏み出せないのよね」

なるほど、朱音さんの年齢で結婚しない理由は、いろいろ訳ありなのだと納得したのだ。
< 127 / 145 >

この作品をシェア

pagetop