甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
車の中に入った瞬間、ほらと目の前に差し出してきて、自分は、ブラックコーヒー缶のプルタブを開けて飲んでいく。
「嫌いだったか?」
「いえ、大好きです」
隣から、ごくりと喉が大きく鳴るほど、喉が渇いていたのだろう。
「…小柴、何を落ち込んでいるんだ?さっきは上手くいっただろう」
「どこがですか?いいお返事頂けませんでしたよ」
「もう一度、拝見すると言ってたろ。あれは、お前の企画に問題はないが、最初の予定より、かかる費用に難色を示したんだよ。こっち側に妥協案を出させる為のやり方だ。だから、こっちも最初から、ふっかけて金額を計上してある。今日中に、これだけの金額ならお願いしてもいいと言ってくるさ」
「そうでしょうか?」
「言ってきても、素直に言う通りにするなよ。一回は、上と相談してから返事すると言ってやれ」
「他の会社にお願いすることになったら、どうするんですか?私、いい加減、首になりそうです」
「あははは、そんなことで首になるかよ。他所に頼む事になったらなったで縁がなかったと思えばいい。俺たちを必要とする処はあそこだけじゃない。もっと、楽に考えて楽しめよ。じゃないといい企画なんて思いつかないぞ。お前の長所は、負けず嫌いなとこだろ。俺は、お前のそういうところを買っているし、期待している」