甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

『お疲れ様です。今、確認作業終わりました。今から帰りますが、ご相談案件がありましたので、対応をお願いします』

珍しく早口になる彼女に、何かあったなと察した。

「わかった。早く帰って来い」

通話が切れて、彼女が戻ってくるまで落ち着かなかった。

予定の時間になってもなかなか来ない彼女。

時計ばかり気になって、仕事場の窓から道路を見たりとする。

やっと、彼女が乗っていった車が戻ってくるのが見えて、ようやく、落ち着いて席に戻った。

その様子を他のスタッフは、どう見てたかはわからないけど、うろつかれて目障りだったろう。

「戻りました」

「お疲れ様でーす」

「小柴ちゃん、おかえり」

沢内は、図太いからか、今までとなんら変わらない態度ができるが、他は、菜々緒の顔を見れないのだろう。

「ただいま戻りました」

俺は、作業に集中していたふりをして、デスクまできた彼女に顔をあげる。

「電話でもお伝えしましたが、ご相談したい件がいくつか出てきました」

「わかった。別室で聞こう」

ついて来いと顎で促して先を歩いていく。

ミーティングルームに入り、彼女が入ってきた瞬間、腕を引き抱きしめた。
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