甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「高山さん、小柴ちゃん」
少し離れたところから、駆け足でやってくる男に、怒りがわく。
「小柴ちゃんだぁ」
馴れ馴れしく呼ぶなと菜々緒の前に出ようとするのに、先に彼女が前に出て行ってしまったが、隣に並んで圧をかけて笑う。
「どうされました、若林さん」
「あっちの茶色の外観の住宅の担当が、俺ひとりなんで、小柴ちゃんに手伝ってほしいと思うんですが、ダメですか?」
見え見えの手に、笑えてくる。
自分でそうなるように仕向けたんだろと、腹のうちで煮えたぎっている。
あ、すみ『申し訳ありません。本日、小柴は、どうしても出店してほしいラーメン店のご店主に本人自らお手伝いするという約束で、出店して頂いているので、そちらを担当致します。人手が必要でしたら、他のアルバイトスタッフを向かわせましょう』」
彼女の声に被せて、先に断っておく。
お前になんて近寄らせるかよと。
「あっ、それなら…仕方ないですね。いえ、うちの事務員に手伝ってもらいますので、大丈夫です。では、失礼します」
一人では、回し切れない仕事のできない男は、
駆け足で、事務所へ。
「最初からそうしろ。見え見えなんだよ」
「断ってくださってありがとうございます」