甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

「…あー、お前が断るより、上司の俺が断った方が角たたないだろ。兎に角だ、あいつと2人きりになるな。絶対にだ」

頷く彼女に満足して、彼女の背を押す。

「よし。そろそろ、来場者が来始める頃だ。爺さんとこ、手伝って来い」

「はい、行ってきます」

初日は、大盛況で、若林も来場者に追われて、契約を結ぶチャンスに大忙しで、菜々緒にちょっかいをかける暇もなかったようだ。

だが、2日目、大盛況で終わり、後片付けに追われる中、油断していた。

俺は、主催者側のテントの片付けを手伝っていた為、菜々緒が、集めたゴミを台車に乗せて一人で駐車場へ向かう姿を見ていたが、動けなかった。

ふと、一人いないことに気づく。

「若林さんは、どちらに?」

「あっ、そちらの小柴さんが運ぶゴミを重そうだと手伝いに行きましたよ」

くそっと内心悪態をついて、「申し訳ありません。私も、そろそろ、職場まで荷物を運ばないといけないので、お先に失礼します。では、また、後ほど」

そういうなり、そこに丸まっていた向かう側のゴミを持って、追いかけたのだ。

「小柴…ゴミ、まだあったぞ」

「高山チーフ、確認不足ですみません。わざわざ持ってきてくれたんですね。ありがとうございます」
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