甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
この人は、いつも欲しい物をくれる人たらしだ…
目頭が熱くなり、潤む目を誤魔化すように、熱いペットボトルのキャップを開けて、慌てて口をつけた。
「熱、…舌、火傷しましたよ」
そんなたいした火傷でもないのに、大騒ぎして舌を出して誤魔化すのだ。
「ちっ…男の前で無防備に舌を出したりするな」
「へっ?火傷したんですよ。ジンジンして痛いんですけど」
「…少しは意識しろよ。ムカつく」
急に目の前が暗くなり、出ていた舌先と一緒に唇が塞がれて、ヌルッとした冷たい物がなぞった瞬間、身体の奥底が震えた。
すぐに離れていったが、あまりの突然のことと身体の変化に、驚きで彼を見つめるしかできないでいた。
な、なに?
「別の感覚に変わっただろう。もう、痛いと騒ぐなよ」
運転を再開させた高山チーフとの気まずい車中は、お互い言葉を交わすこともなく会社に着いたのだった。
着いた早々、高山チーフは、社長へ報告へ行き、私は、自分のデスクに戻っていた。
「おーい、菜々緒ちゃん?大丈夫?戻ってきてからぼーとして何かあったの?」
デスクを挟んで、私の前で手を振る彼女は、私より四つ年上の藤原 朱音さんだ。
数少ない女子社員の中で、唯一、仲よくしてくれるお姉様。