甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
そんな権力などチーフにあるはずもなく、うちの権力を握っているのはマネージャーである。
だが、既に高山チーフとマネージャー、社長の3人で話はついているのだろう。それを勿体ぶって小出しして、こちらが有利になるよう会話している。
私ではできない芸道に関心するばかりである。
「はい、なんとか説得しますので、後ほどお電話差し上げてよろしいでしょうか?…ありがとうございます。では、失礼します」
通話を切った瞬間、手を叩く高山チーフに、皆も釣られて拍手した。
「喜べ、小柴の担当案件、うちに決まったぞ」
「小柴ちゃん、良かったね」
「おめでとう」
やんややんやと賑やかになるスタッフルーム。
「俺は社長ともう一度話をしてから、折り返し電話しておく。小柴は、来週、担当者へ連絡しておけ」
「はい。ですが、なぜ私ではなく高山チーフに電話があったのでしょうか?」
「企画内容に文句はないんだ。あるなら金だろ。お前と交渉するより、上司の俺と話した方が早いと思っただけだろう。そんな小さなことで、落ち込むな。お前は、担当者と打ち合わせして、成功することだけ考えて進めていけばいい。面倒ごとは上司に任せて、甘えることも覚えろ」
「チーフカッコいい。俺も甘えていいですか?」