甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「お前は、甘え過ぎだ。いい加減、唸らせる企画を作れるようになれ」
「贔屓だ。小柴ちゃんに優しくして、俺には冷たい」
「男を甘やかす気はない」
「えー」
スタッフルームを出て社長に報告に行く高山さんを見送った沢内さんは私と同じ年齢だが、昨年、彼が勤めていた会社とうちがイベントを行った際に、高山チーフに惚れ込んだ沢内さんが転職してきたのだ。
なんだかんだと言いながらも、高山チーフは、沢内さんを可愛がっているので、この光景は、日常的な2人のスキンシップなのだ。
「終業なので、お先に失礼します」
派遣社員の男性は時間にキッチリで、サッサと帰ってしまった。
「私も、帰ろうと。菜々緒ちゃん、今日は、もう帰るでしょう?」
「はい」
「明日は休みだし、ご飯行こうよ」
「えっ、俺も」
「あんたはダメ。誘われてもいないのに、女同士に入ってくるなんてモテないわよ」
「小柴ちゃん、俺も…」
「ごめんね」
先程の件を朱音さんに相談したい。
「チェッ、小柴ちゃん、今度は、俺とご飯行こうね」
軽い感じの笑顔で手を振る沢内さんだが、彼にとって日常的な挨拶のようなものなのである。
「沢内さんの奢りでならいいですよ」
「後輩にたからないでよ」
ほら、本気じゃないのだと、笑い流したのだ。