甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
ジョッキを持って、「お疲れ」とカチンと軽く乾杯の挨拶の後、朱音さんは、ぐびぐびと半分ほど飲みテーブルの上に戻した。
私は、舌がまだ少しピリッとするので、チビっと飲んでいく。
「で、どうしたらベロチューされるのよ」
「それが…私の落ち込み様が酷かったんですかね⁈優しく励ましてくれて、私、うるってきて泣きそうになったんです。泣き顔なんて見られたくないじゃないですか⁈熱い飲み物だったのに舌を少し火傷して、大袈裟に騒いで誤魔化してたんです。そしたら…無防備に舌出すなとか、意識しろとか、ムカつくとも言ってから、されたんです」
「はぁっ…あのポンコツ、犬以下だな」
朱音さんにかかると、仕事のできる高山チーフも、散々な言われようになるのかと驚かされる。
「ほんと犬以下で、節操なさすぎですよね。私にまでキスするなんて…最近、忙しすぎて、ご無沙汰なんですかね?」
目の前の朱音さんの目は、目が点になるという言葉が当てはまるぐらい、大きく見開いて瞬きもしない。
思わず、彼女の顔の前で手を振り確かめてしまう。
「あかねさーん、おーい」
「菜々緒ちゃん」
「はい」
「あなた、わかってないの?」
「何がですか?」