甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
社長は、運んできたデザートのバニラアイスをすくい、朱音さんの口元へ運んでいく。
「どこから聞いてたの?」
「健斗は絶対ないって言ってるところからかな」
スプーンの上で溶け出したアイスを朱音さんの口元近くに運んでいく社長に、朱音さんは、抗うことなく餌付けされている。
私の隣では、苦々しそうに私のアイスを食べだす高山チーフ。
「私のアイスなのに」
文句が聞こえたらしい高山チーフは、同じスプーンでアイスをとり、社長の真似をして私の口元へ運んでくるのだ。
「…あげます」
「ふーん。なら、もらう」
間接キッスなどできるものかと、視線を前に戻すと、朱音さんは、頬を染めてアイスを味わっていた。
そんな朱音さんを彼氏である社長は、可愛いもの愛でる表情で、頬を緩めて餌付けしているのだ。
仕事中のかっこいいイメージの朱音さんとの違いに驚かされる。
「あっ、小柴さん、例の件、うちが請け負う事になったから、協力してくれる出店者側とも話詰めていってね」
「はい、ありがとうございます。頑張ります」
「うん、元気でいい返事だ。朱音が、君を可愛いがるわけだ。健斗もね」
高山チーフに可愛いがられた記憶はないが、世渡り下手でも、社会人になった大人なので、空気は読める。