甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

「メイクは?タクシー呼ぶし、わざわざ帰る為にメイクするのも面倒だろ」

まさか、メイクまでできるのかと思ったが、ただの気遣いだった。

「そうですね。お願いします」

高山チーフは、チェックアウトする際、タクシーもお願いしてくれて、来た時と同じようにエレベーターで降りていく。

エレベーター内で、さすがに熱量は冷めているので無駄なキスはなかったが、手を繋がれていることが解せない。

「おいくらでしたか?半分くらい出しますよ」

半日以上いたのだ。
結構な額になっただろうとの私なりの気遣いだった。

「いらない」

「えっ、なら、タクシー代出します」

「いらない…はぁぁ、俺のメンツの問題だから、カッコつけさせろ」

「十分かっこいいのに、それ以上必要ですか?」

「…やっぱ、帰せないわ」

「えっ?何か言いました?」

何かの呟きは聞き取ることができず、下の階に到着して開くと同時に、手を引かれてホテルの外に待機していたタクシーに乗り込む。

行き先を告げた先は、私の住むアパートではなく、高山チーフのマンションへ先に向かうのだろう。

私と反対方向になるので、2台頼んでくれたらよかったのにと思いつつ、外の景色を眺めていた。
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