甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

深みにハマる前にと、もがいても、体に刻まれた欲情が忘れられず、求められると応えてしまう体が憎い。

意志の弱い自分が嫌い。

「はぁっ…もう。どうしたらいいのよ」

こんなに悩むなら、あの時、挑発に乗らなければよかったと、後悔するのだ。

悩んでも、時間は経っていく。出勤時間を目前に、念の為に、タートルネックで首元を隠すが、キスマークの位置が悪い。

なんでこんなとこに…

鏡で確認して、じっと見ていなければ気にならないと納得づけて、部屋を出た。

道中、まだ少しぎこちない動きだが、言い訳は考えてある。

ギックリ腰になったことにする。

これはこれで恥ずかしいが、やり過ぎて痛いというより断然いい。

「おはようございます」

「おはよう…って、菜々緒ちゃん、腰、痛めたの?」

「そうなんです。軽くギックリ腰したみたいです。あはは…」

「えっ、大丈夫なの?休んでよかったのに」

「小柴ちゃん、ギックリ腰なの?」

沢内さんが、聞きつけてやってくる。

「一昨日、台所掃除してて、冷蔵庫を動かそうとしたら、意外と重くてやっちゃいました」

「力仕事なら、呼んでくれたらよかったのに」

「そうですね。次回はお願いします」
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