甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
だが、沢内さんのプライベートの連絡先なんて知らないので、ここだけの話だ。
痛い腹を探られたくないので、この話はお終いにして、少し早いが仕事に取り掛かる。
そこへ、高山チーフが気だるそうに入ってくる。
「おはよ」
『「おはようございます」』
あちこちから、挨拶が被る。
「高山チーフ、朝からだるそうですね。昨晩、遅くまで飲んでたんですか?俺も誘ってくださいよ」
高山チーフが来るなり、懐いた子犬のように嬉しそうに後をついていく沢内さん。
「いや、金曜の夜から野良猫可愛がってたら、あんま寝れてないだけだ」
目の前にいる朱音さんは、目をキラリと輝かせた。
何か、気づいたのだ。
うわーと、頭を抱えたくなる。
「野良猫ですか?拾ったんですか?」
「あー、まぁ、可愛くて連れ帰ったな」
「高山チーフが、そんなことするなんて、よっぽど可愛い猫なんですね。今度、紹介してくださいよ。俺も猫好きですよ」
「…昨日、逃したんだわ」
「えっ、逃げたんですか?まぁ、野良猫を可愛がっても、懐くまで警戒してますしね。逃げられたのは仕方ないですね」
「そうなんだよな。警戒しまくって、すぐ、爪を立ててくるんだ」
「あー、その傷。猫ちゃんでしたか⁈」