甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「諦められません。あの蕩けるチャーシューと透き通った透明なスープに絡むちぢれ麺に、半熟たまご。一度食べたら忘れられない味です。知らない人がいるなんて、もったいないです」
「…わかった。俺をその店に連れて行け。そこまでいうなら、食べてみたい。だが、俺が満足できる味じゃなかったなら、今回諦めろ」
「…はい」
早速ということで、今日の終業後、お店に向かった。
表通りにあるラーメン店とは違い、路地に入ってしまわないと見つからないお店。看板も小さく、店内はカウンター席しかない小さなお店で、店主のこだわりでラーメンしかない。あってもライスのみで、餃子が頼みたければ他所へ行けというようなお店なのだ。
それでも、店の外には仕事帰りのサラリーマンなど数人が、オープン前から待っている。昼の数時間営業して、一旦閉めて夕方、スープが無くなりしだい閉店してしまう為、夕方は早く並ばなければ味わえないのだ。
私達は既に再開したお店の列の最後尾に並んで順番が来るのを待った。
私達の番が来て、カウンター席についた時、店主は、私を見て渋い表情をする。
「また、来たのか?何度来ても断る」
「わかってます。でも、諦められません。こんなに美味しいのに知らない人がいるなんて悔しいです。そこで、今日は、私の上司にも味わってもらいたくて連れてきました。えへへ」