甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「部下がご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。私は、こだわりのあるお店が出店するはずがない。もう諦めろ言ってるんですが、このお店の味の虜になったこいつが強情を張るもので、そんなに美味いのかと、私が食べてみて、そこいらのラーメン屋と変わらないなら、諦めさせようと思いついてきました」
高山チーフの挑発的な物言いに、店主は明らかにムッとしていた。
「ふん、俺の店は他とは違う。驚くなよ」
店主は、外の看板を外しに外へ出て、戻ってきて、麺を茹でる。
しばらくして出てきたラーメンは、ここのお店がこだわり、一種類しかない透明な塩ラーメン。茹でた青菜が乗り、太く歯応えのあるメンマ、ほろほろのチャーシューに、きみがとろとろの煮卵、白ネギが乗り、見るから美味そうなラーメンに、高山チーフも喉を鳴らした。
これで、税込1,000円なのだ。
「さぁ、食って帰ってくれ」
ぶっきらぼうな店主は、明日の仕込みにかかった。
『「いただきます」』
「スープからですよ。驚きますから」
「お前は店主か、横からうるさくいうな」
レンゲで透明なスープをすくい、口に含んだ高山チーフは、一口、二口とスープを啜る。
そして、麺を啜り味わって、チャーシューを口へ運ぶ。