甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
唸るようなため息が横から聞こえ、思わずクスリと笑みがでる。
でしょ⁈
美味しいのよ。
そして、隣の男は、あっという間にたいらげて思案顔中。
こういう時の顔は、何かを企んでいる。
「ごちそうさまでした。今日も美味しかったです」
「食べたか?」
「はい」
「なら、帰るか。ごちそうさまでした」
高山チーフは、テーブルにお金を二千円置いて立ち上がり出口まで歩いていく。
私は、えっ⁈と驚くばかりで後を追ったが、店主も何も言わない高山チーフに驚いて、背後に声をかけてきた。
「おい、感想はないのか?」
「悔しいので言いませんよ。人気が出て味が落ちる、そこら辺のお店になってほしくないので、出店は諦めます」
「バカにするな。俺は手を抜いたりしない。自分の仕事に誇りを持って作ってる。客は妥協しない俺と味に惚れて通っているんだ」
背を向けたままの高山チーフは、ニンマリと笑う。
「こだわりの強い店ほど、そう言います。売り上げ重視になって味を維持していく自信がないからでしょうね。多くの方々に評価されることが怖いんですよ」
うわー、めちゃくちゃ煽ってる。
怒鳴られると肩をすくめたのだが…