甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

「俺を怒られせて売り言葉にのらせようとするなんて、嫌な男だなぁ」

「バレました?」

人のいい笑みで振り返る高山チーフに、店主も呆れていた。

「評価なんていらない。来たお客がお前さんのように丼を空にしてくれれば満足だ。余計なスープは作らない。無くなりしだい終わりにしていいなら、出店してやる。そこの嬢ちゃんがしつこいからな。だが、一日だけの一回きりだ」

「ほんとですか。ありがとうございます」

だが、2日あるイベントを1日しか出店しないという店主に、高山チーフがどうでるか見守った。

「わかりました。1日だけで構いません。他のお店は、トッピング券を配る予定でいますが、こちらは必要ないですよね」

「そんなものいらないだろ。これ以上、何をのせるというんだ」

「えぇ、これ以上必要ないぐらいです。ですが、他のお店と均等を保たなければ不満が出てくるので、券を持参してきたお客さんには、店主のお気持ちでネギの増量なり、メンマの増量をお考えいただけないですか?」

「…わかった。お客の希望でどっちか増量してやる。はぁっ…やな男だ。売り上げなんて気にしないが、こっちは損ばかりだ」

「何をおっしゃいます。たった一日で、あなたのラーメンファンが増えるんですから、いいじゃないですか。まさか、味に自信がないんですか?」
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