甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
≪ 健斗side ≫


仕事では完璧な男も、愛しい女を前にしたらクズな男に成り下がり、駄犬のように盛る自覚はあるのだ。

そして、恋愛に臆病で、素直になれない女は、男の手によって、開花し、艶めかしく華やいでいく。

そんな彼女を他所の獣が放っておくはずもなく、虎視眈々と狙われていくとは思いもしない男は、懐かない猫(彼女)が擦り寄ってくるので愛おしく抱きしめ、出会った頃を思い出していく。

#

「寝ている時は、素直だよな」

可愛くて、可愛くて仕方ない女。

彼女に出会った日のことは鮮明に覚えている。

3年前、彼女の家の近くの商店街だった。

ここ、20年ぐらいで世の中は大きく変わった。

誰もが携帯電話を持ち出して、家庭での固定電話も少なくなる時代。

ショッピングモールなどの商業施設が建ち出して、商店街内外などに、あちこちにあった映画館も大型施設に併設されていくと、人の動きは自然とそちらへ向き、どこも商店街は閑散としだしていく。

そこでイベント会社を利用してでも、商店街を運営する団体は人を呼び込もうと必須になる。

うちも、その恩恵のチャンスが回ってきて、3年ほど前から、あちこちの商店街でイベントを任されるようになった。
< 71 / 145 >

この作品をシェア

pagetop