甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
彼女に出会った当時、商店街の発展に貢献できる企画を手探りで始めた頃だった。
どうしたら、人を呼び込めるのか?
どうしたら、人が足を止めてくれるのか?
商店街が40周年を迎えるお祝いイベントの宣伝を任されて、ちんどん屋、パフォーマンスやを雇い、賑やかさに人は足を向けてくれた。
だが、昔のように人で溢れることはなく、俺にとって、失錯だった。
眺めながら素通りしていく人々が多く、宣伝効果がまったくない状況。
それでも、なんとかしようとパフォーマーの衣装を借りて、子供連れの親子達にお菓子と一緒にチラシを配って宣伝して回った。
ふと、人々から離れた場所で一人足を止めて、パフォーマーを見ている若い女が目についた。
儚げな表情で、今にも倒れてしまいそうな喪失感を漂わせ、危うさに惹きつけられ、彼女の元へ足が向いていた。
遠くから見ても綺麗だと思ったが、近くまでくると、自分好みで、柄にもなくドキドキとした記憶がある。
恵まれた容姿のおかげで、女性にモテる自覚はあり、それなりに遊んでもきた。
だが、どんな美人と一緒にいても、あんなにドキドキしたのは生まれて初めてだった。
彼女の笑顔が見てみたい
彼女を笑わせたい
道化のように下手くそなパントマイムを披露すると、あまりの下手くそさに彼女は笑ってくれた。