甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

彼女じゃないからか、女を抱けなくなる。

もう、俺は重症だった。

惚れた弱みというのもあるのだろうが、彼女の仕事ぶりは、不器用すぎてほっとけない。

いい企画を作れるのに、交渉となると弱腰で営業には向かないのだ。

だから、どうしてもという時は、上司の顔を出して手助けしてしまう。

そんな俺を、仲間は気がついているようだ。

特に、朱音さん辺りがうるさく厄介なのだが…

出会った当初のまま、儚げな危うさは健在で、男にトラウマがあるのか、一定の距離感を引いてしまう彼女。

特に、俺はいまだに警戒されている。

最初は嫌われているのかと悩んだりもしたが、目が合えば、動揺し頬を赤らめる仕草さから嫌われていないと思っている。

その仕草も可愛いらしく、つい、視線を合わせようと彼女を見つめてしまうのだが、上司と部下の関係でいれば、問題なく接してくれるのが救いだ。

一生懸命で
不器用で
ほっとけない。

仕事だから厳しいことも彼女に言わなけれならない辛さ。

悔しそうに目に涙を溜めている姿を見るたびに、彼氏だったなら、優しい言葉をかけて抱きしめてやれるのに、できずにもどかしい日々が過ぎていく。
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