甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
15分ほどしてチーフが口角を上げ戻ってきたことで、私以外のスタッフもホッと胸を撫でおろす。
「小柴、先方に乗り込むぞ」
「はい」
約束の時間10分前に到着したら、案内してくれた女性が、やたらと高い声で高山チーフにアプローチしていたが、これから商談がある事から、チーフは、気がつかないふりをするらしい。
そこへ上司を連れて、担当の若林さんがやってきた。
「お待たせしました」
「こちらこそお時間いただきましてありがとうございます」
初対面な者同士で名刺交換をして、お互いに席についた。
「早速ですが、先程お電話でお話しさせて頂きました件をこちらの方で、より良くなるだろうと思う案を考えてまいりました」
「その件は、こちらの若林からも伺いましたが、当社としては、別にラーメン祭にこだわりはないんですよ。これから家を建てる考えのある家庭を住宅展示会場に集めたいだけなので、出店側の売り上げとか場所がどうとか言われてもね、こちらは場所を提供する側ですよ。なんとかするのが、そちらの仕事でしょう」
あーなるほど。
こんな考えの上司の下にいるから、担当の若林さんもあんな態度になるのだと、ぎゅっと握り拳を作った。