甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
6
ラーメン祭りのイベントの準備も終盤にかかり、出店者側の準備もできて、主催者側の若林さんと最終打ち合わせが今からあるのだ。

はぁっ…と、気が重い。

もう少しの我慢だと、重い腰を上げた。

「今から、朝日ホームの若林さんと最終打ち合わせに行ってきます」

「あぁ…わかった…」

みんなから、「いってらっしゃい」と声がかかり、「行ってきます」と笑顔を作り外の社用車に向かう。

エンジンをかけて、憂鬱さにハンドルを握ったまま頭をハンドルにのせ、大きくため息をついた。

はぁぁ…

ここ最近の若林さんの視線が煩わしいのだ。

権力には腰が低いが、弱い者には強気に出る、クソみたいな男。

少し顔が整っているからか、自惚れぽくもあり、やたらと接触してこようするのが嫌なのだ。

同じイケメン顔でも、高山チーフとは大違いな人。

権力にも自分の意見を言える男
弱い者には、手を差し伸べる優しい男
自惚れてても、嫌味のない男
触られても嫌悪感が起こらない男

それが高山 健斗なのだ。

車の窓ガラスから、トントンと叩く音に顔をあげると、そこには、腰を屈めている高山チーフがいた。

慌てて窓を下ろした。

「どうしたんですか?」

「あぁ、忘れ物」
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