甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
「えっ、私、何か忘れましたか?なんだろ」
助手席に置いた鞄を慌てて探ろうとしたら、窓の外から手が伸びてきて、顎ごと手のひらで掴まれて振り向かされた瞬間、顔を車の中まで入れていた高山チーフの顔があり、唇にキスされていたのだ。
人通りもある駐車場だから、すぐに離れたが、まだ、そこに顔はあるのだ。
熱くなる私の顔に、満足気に微笑む男。
「後、少し頑張ってこい。まぁ、あの若林って男が何かしてくるようなら、俺にちゃんと報告な。わかったな」
念押しされて、顔を真っ赤にさせて頷く。
よしよしと、頭を撫でていく手のひらが嫌じゃない。
「運転、気をつけて行って来い」
手を振った後、両手をポケットに入れて、テナントビルに戻っていく男の背中を見送り、また、ハンドルに頭を乗せて、大きくため息をつく。
なんなの…
もう、わけがわかんないよ。
強く高鳴りドキドキとする心臓が止まらない。
セフレ状態の間柄で、こんなに甘く扱われたら、運転に集中できそうにない。
心を落ち着かせ運転を開始するまで、しばらくかかるのだった。
約束の時間にギリギリなんとか間に合って、ホッとする。
「遅くなり申し訳ありません」