甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
高山チーフの声がけのおかげだ。
若林さんと一緒に、会場内をチェックシートに印をつけて確認して回る。
「ねぇ、小柴ちゃん、イベント終わったら打ち上げしようよ」
小柴ちゃん?
うちの会社にも私をそう呼ぶ人はいるが、若林さんとは、そこまでの仲でもなく、仕事相手である。
ゾワッと鳥肌が立つが、笑顔でスルーする。
「打ち上げですか?うちの会社で、そちらとご一緒に打ち上げをする居酒屋おさえてありますよ」
「それとは別で、2人きりでしようって言ってるんだよ」
ニタリと笑われて、気持ち悪いし、肩を馴れ馴れしく抱こうとされて、思わず避けてしまう。
「あっ、その件は、上司に相談してからじゃないとお答えできないので、すみません」
「プライベートなのに、上司関係ないだろ」
「えっと、うちの決まりでして、仕事相手とプライベートで会って、情報の露出を避ける為でして、規約違反すると、いろいろと大変なんです」
「黙ってればわからないって」
「はぁぁ、それはどうかと…」
グイグイとくる為、断る口実が思いつかない。
そこへタイミングよく電話がかかってきた。
失礼しますと目礼して電話に出ると、声を聞いた瞬間、安堵するのだ。