甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る
嫌われてしまったらと心配してる辺り、どっぷりとハマっているのに、今の菜々緒は、ただ、母のようになりたくない思いが強いのだ。
「高山チーフだけが男じゃない。他にもいい男はたくさんいる。あんな発情したら止まらない駄犬なんかより…いる。たぶん…」
言い聞かせるように、気合いを入れて決意するのだ。
「まずは、仕事優先よ。恋愛なんて二の次なんだから」
運転を再開させるのだった。
結局は、高山チーフ以外と、とはならない辺り、答えは出ていた。
「戻りました」
「お疲れ様でーす」
「小柴ちゃん、おかえり」
自分の作業に集中してる人は、顔もあげずに、ただ反応する。
そして、沢内さんの「小柴ちゃん」呼びは、若林さんのようにゾワっとくるものはない。
彼の場合、表情にも話し方にも、下心がないからだろう。
「ただいま」
そういいながら鞄を机に置いて、中からメモ用紙を持って高山チーフの元へ。
「ただいま戻りました」
顔をあげる高山チーフ。
「電話でもお伝えしましたが、ご相談したい件がいくつか出てきました」
「わかった。別室で聞こう」
ついて来いというふうに、顎で促されて後をついていく。
ミーティングルームに入るなり、勢いよく腕を引かれて、なぜか、抱きしめられている。