甘やかで優しい毒〜独占欲強めな彼に沼る

嫌われてしまったらと心配してる辺り、どっぷりとハマっているのに、今の菜々緒は、ただ、母のようになりたくない思いが強いのだ。

「高山チーフだけが男じゃない。他にもいい男はたくさんいる。あんな発情したら止まらない駄犬なんかより…いる。たぶん…」

言い聞かせるように、気合いを入れて決意するのだ。

「まずは、仕事優先よ。恋愛なんて二の次なんだから」

運転を再開させるのだった。

結局は、高山チーフ以外と、とはならない辺り、答えは出ていた。

「戻りました」

「お疲れ様でーす」

「小柴ちゃん、おかえり」

自分の作業に集中してる人は、顔もあげずに、ただ反応する。

そして、沢内さんの「小柴ちゃん」呼びは、若林さんのようにゾワっとくるものはない。

彼の場合、表情にも話し方にも、下心がないからだろう。

「ただいま」

そういいながら鞄を机に置いて、中からメモ用紙を持って高山チーフの元へ。

「ただいま戻りました」

顔をあげる高山チーフ。

「電話でもお伝えしましたが、ご相談したい件がいくつか出てきました」

「わかった。別室で聞こう」

ついて来いというふうに、顎で促されて後をついていく。

ミーティングルームに入るなり、勢いよく腕を引かれて、なぜか、抱きしめられている。
< 99 / 145 >

この作品をシェア

pagetop