青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました
プロローグ
夜景の広がる窓には男の背中が映っていた。
ベイサイドにたたずむ五つ星ホテルで、その男に抱きしめられた自分の姿を史香は他人のように眺めていた。
そんな彼女の視線を逃すことなく男が唇を重ねてくる。
二度目の口づけに容赦はない。
こじ開けられた口内に侵入した舌からシャンパンの味が伝わる。
歯先を撫でた舌が奥でためらっていた史香の舌を捕らえ、絡みついて束縛を始める。
男の本能が宿った動きに息が苦しくなるくらい責め立てられ、頭がぼんやりとし始める。
立っていられないほど脱力した史香は支えを求め、背中に回した手で男の体を引き寄せた。
それも罠だったんだろう。
同意と受け取った男の手が地味なレディースパンツのホックを外すと、薄い布一枚を残して史香の下半身があらわになる。
唇が離れ、熟した桃を包むように男が両手で史香の頬を撫でた。
男の指先が旋律を奏で緊張をもてあそぶ。
視線は媚薬だ。
見つめられる恥ずかしさに史香は目を閉じ、男を引き寄せ、触れ合わせた額の熱を感じた。
いつの間にか男の右手がブラウスのボタンをつまんでいる。
だが、その手は動かない。
引っ張られた意思だけが史香の胸に伝わり、鼓動を高鳴らせる。
額を触れ合わせたまま男は待っている。
背中に回された左手が腰から下で催促を始めた。
史香は自分から男に口づけた。
それを合図と受け取った男はブラウスのボタンを一つずつゆっくりと外していく。
焦らすように、史香の羞恥をじっくりと味わうように、ボタンを一つ外すたびに男は鼻先から眉、頬、真っ赤に熱を帯びた耳へとキスを散らしていく。
ブラウスが音もなく床に落ちる。
露わになった鎖骨に唇を押し当て所有欲の印を刻むと、男はネクタイを引き抜きシャツを脱ぎ捨て、肌の熱を触れ合わせながらこわばった女の体をベッドへと押し倒した。
男の欲望が雪崩のように襲いかかる。
身にまとうのは上も下も下着だけ。
そう意識した瞬間、史香は男を拒むように急に体を丸めた。
脚に力を込め、胸を手で覆い隠す。
抵抗など無駄だと分かっていてもそうせずにはいられない。
経験のない羞恥と経験のなさによる不安が渦を巻いて史香を殻に閉じ込めた。
男がいったん体を起こしてベルトを外し、残りの服を脱ぎ捨てた。
目をそらす史香の体を男が背中から腕を回して包み込んだ。
「信じられない?」
それはそうだ。
決して交わることのない二人が出会ってしまったのだ。
それが偶然であれ必然であれ、まして運命であっても、出会いはつねに突然で確信などはどこにもない。
なのに、体の火照りが嘘を暴く。
さざ波が重なり合い、調和し、大きなうねりとなって理性の堤防を乗り越えてくる。
背中の男が女の耳たぶを口に含む。
胸の谷間ににじみ出した汗がブラのパッドを湿らせる。
一瞬、自分の体から獣のような匂いが立ち上った気がした。
フェロモンに挑発された男の指先に力がこもる。
うなじから丸い肩へと男の唇が這い、背中のホックが外される。
あらわになった胸を隠す史香の体を転がし、男がベッドに組み敷く。
かすかな抵抗を愛おしみながら男の手が史香の手に重ねられ、誰にも見せたことのない痴態があらわにされる。
信じてなどいない。
駄目なのに。
愛したら駄目なのに。
なのに吸いつくような肌を触れ合わせているだけで力が抜けていく。
史香はきつく目を閉じて甘美な男の熱を感じていた。
ベイサイドにたたずむ五つ星ホテルで、その男に抱きしめられた自分の姿を史香は他人のように眺めていた。
そんな彼女の視線を逃すことなく男が唇を重ねてくる。
二度目の口づけに容赦はない。
こじ開けられた口内に侵入した舌からシャンパンの味が伝わる。
歯先を撫でた舌が奥でためらっていた史香の舌を捕らえ、絡みついて束縛を始める。
男の本能が宿った動きに息が苦しくなるくらい責め立てられ、頭がぼんやりとし始める。
立っていられないほど脱力した史香は支えを求め、背中に回した手で男の体を引き寄せた。
それも罠だったんだろう。
同意と受け取った男の手が地味なレディースパンツのホックを外すと、薄い布一枚を残して史香の下半身があらわになる。
唇が離れ、熟した桃を包むように男が両手で史香の頬を撫でた。
男の指先が旋律を奏で緊張をもてあそぶ。
視線は媚薬だ。
見つめられる恥ずかしさに史香は目を閉じ、男を引き寄せ、触れ合わせた額の熱を感じた。
いつの間にか男の右手がブラウスのボタンをつまんでいる。
だが、その手は動かない。
引っ張られた意思だけが史香の胸に伝わり、鼓動を高鳴らせる。
額を触れ合わせたまま男は待っている。
背中に回された左手が腰から下で催促を始めた。
史香は自分から男に口づけた。
それを合図と受け取った男はブラウスのボタンを一つずつゆっくりと外していく。
焦らすように、史香の羞恥をじっくりと味わうように、ボタンを一つ外すたびに男は鼻先から眉、頬、真っ赤に熱を帯びた耳へとキスを散らしていく。
ブラウスが音もなく床に落ちる。
露わになった鎖骨に唇を押し当て所有欲の印を刻むと、男はネクタイを引き抜きシャツを脱ぎ捨て、肌の熱を触れ合わせながらこわばった女の体をベッドへと押し倒した。
男の欲望が雪崩のように襲いかかる。
身にまとうのは上も下も下着だけ。
そう意識した瞬間、史香は男を拒むように急に体を丸めた。
脚に力を込め、胸を手で覆い隠す。
抵抗など無駄だと分かっていてもそうせずにはいられない。
経験のない羞恥と経験のなさによる不安が渦を巻いて史香を殻に閉じ込めた。
男がいったん体を起こしてベルトを外し、残りの服を脱ぎ捨てた。
目をそらす史香の体を男が背中から腕を回して包み込んだ。
「信じられない?」
それはそうだ。
決して交わることのない二人が出会ってしまったのだ。
それが偶然であれ必然であれ、まして運命であっても、出会いはつねに突然で確信などはどこにもない。
なのに、体の火照りが嘘を暴く。
さざ波が重なり合い、調和し、大きなうねりとなって理性の堤防を乗り越えてくる。
背中の男が女の耳たぶを口に含む。
胸の谷間ににじみ出した汗がブラのパッドを湿らせる。
一瞬、自分の体から獣のような匂いが立ち上った気がした。
フェロモンに挑発された男の指先に力がこもる。
うなじから丸い肩へと男の唇が這い、背中のホックが外される。
あらわになった胸を隠す史香の体を転がし、男がベッドに組み敷く。
かすかな抵抗を愛おしみながら男の手が史香の手に重ねられ、誰にも見せたことのない痴態があらわにされる。
信じてなどいない。
駄目なのに。
愛したら駄目なのに。
なのに吸いつくような肌を触れ合わせているだけで力が抜けていく。
史香はきつく目を閉じて甘美な男の熱を感じていた。
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