青い鳥はつぶやかない 堅物地味子の私がベリが丘タウンで御曹司に拾われました

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 六月、史香の体調を考慮しつつ、ベリが丘のオーベルジュで結婚式がおこなわれた。

 式そのものは簡潔に済ませ、その後は、立食形式のカジュアルなパーティーとなった。

 ガラス張りのサンルームテラスはシェードで日差しを調節できて空調も効いている。

 台座の上に固定された椅子に座ったまま史香は招待客の挨拶を受けた。

「このたびはおめでとうございます」

「ありがとうございます」

 妊娠していることはあらかじめ伝えられていたから、みな時間に配慮した形式的な顔合わせで了解を得ている。

 道源寺家側の招待客は蒼馬の祖父母などごく身近な親族の他に、学生時代からの友人などプライベートの限られた範囲だったし、史香も静岡から出てきた両親と、会社の上司や同僚数名を呼んだだけだった。

 正直なところ、親しい友人もいなかったし、静岡の親戚はみな高齢で、呼び寄せるほどふだんから交際があるわけでもなかったからだ。

 お互いの両親は蒼馬の実家で事前に顔合わせを済ませていたし、相手の資産についても、父親はあまり驚いてはいなかった。

「県庁の仕事で地元のいろんな名士に会ってるから、お金持ちだからってあんまり驚かないな。まあ、史香もお金と結婚するわけじゃないだろ」

「いい人に巡り会えて良かったじゃない」

 母親も相手の家の違いにはあまり関心がないようだった。

「孫の世話ができるなんて、夢みたいだわ。あなたが結婚するなんて、思いもしなかったもの」

 ですよね。

「私たちもまだ体力があるうちで良かったわよ。ねえ、お父さん」

「ああ、まったくだ」と、父が背筋を伸ばして肩を回し始める。

 生活の違いを気にしているのは史香本人だけらしい。

 ただ、もう不安はない。

『三人で幸せになろう』と言ってくれた蒼馬の言葉を信じているし、今の二人だけの生活では、その言葉に違わぬ愛情を注いでくれる。

「どう、体調は?」と、歓談の合間に蒼馬が気にかけてくれる。

「うん、平気」

「無理しなくていいからね。みんな分かってるからさ。遠慮なく言ってくれよ」

 ただ一人、おめでたい席で不満をこぼす人がいる。

「先輩、話が違うじゃないですか」

 不機嫌な顔で菜月がブーケを指でつついている。

 ブーケトスで取りに行ったのが菜月だけ、つまり、出席者の女性はみな既婚者、そして、若い男性はすべてその夫だったのだ。

 家同士で決まった結婚や、良家の子女が通う学校で知り合った者同士が卒業と同時に結婚することも珍しくないようで、資産家の子女は結婚が早いらしい。

 やはり住む世界が同じでないと理解し合えないこともあるのだろうし、それを分かっているからこそ、お互いに尊重し合えることもあるのかもしれない。

 蒼馬の後輩で、年下だけどもう子供が二人いる夫婦なんかもいて、史香の体に気をつかってくれたりもする。

 だけど、そんな事情は出会いを探しに来た菜月には関係のないことだ。

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