あのとき、君がいてくれたから
私は二人の間をすり抜けると荷物をまとめ、席をたった。
私が扉に向かって歩きだそうとしたとき、一人の男子とぶつかった。
ふわっと香ってくる甘い香水の匂いで誰なのかすぐにわかった。
「悪い」と私の目も合わせずに言ってきたのはクラスのムードメーカー
遠坂(とおさか)。
私がむっとした顔で動かないでいると、遠坂は私をのぞきこんできた。
「まじごめん。前見てなかったわ。」
遠坂の表情は私が思っていた倍以上くもっていた。
いつもならとくに何も返さず帰るのだけど、今日はさすがに心配で、言葉を返した。
「別に大丈夫。それよりも私はその香水が気に入らない。校則ではダメよね?それ。」
すると遠坂は嫌そうな顔をした。
「は?人がせっかく心配してやってんのに注意すんの?さすがおもしろみもない優等生だな。」
そう言い捨てると友達の輪に戻っていった。
やってしまった。
これが私の唯一の悪いくせだ。