ご褒美を頂戴♡
「オリビア、風を読むんだよ。方角を意識するんだ」
「教えなくていいの!」
ハヤトの言葉に苛立ちを覚えるオリビア。しかし、真面目な彼女はついハヤトの教え通りにやろうとする。
集中する為に目を閉じてみると、風の音が聞こえてくる。何度かやってみたのち、流れに逆らわずにある時フッと力を抜くと、今まで飛べなかった高さまで上がる事が出来た。レベル別に合わせて校舎に貼ってある3級用の目印に、初めて届いた。
「やった…」
声が出る。思わずハヤトを振り返ると、彼は優しく微笑んで頷いた。
「ハヤト!出来たわよ!!」
「おめでとう。これでまた級が上がるね」
「見て!見て!ハヤト!」
オリビアは何度も3級コースを行ったり来たりしている。先程までの不機嫌な表情が嘘のように無邪気に喜ぶオリビアを、ハヤトも笑顔で見守る。
ひとしきり飛び回った後、オリビアは地上に降りて、息を整えながら笑顔を浮かべた。ハヤトがゆっくりと近付いてくる。
「オリビア、凄いね。君は飲み込みが本当に早い」
「ありがとう。ハヤトの教え方が上手なのよ」
「先生は、『見て盗め!』っていう感じだしね」
2人でクスクスと笑い合う。オリビアは、自分が上手くいった時にだけは、ハヤトに素直に笑顔を見せる。
「……でもさ、すでに君はかなり早いペースで級をあげているだろう。焦らずにもっとゆっくり上達すればいいんじゃないのかな?」
「だって、あなた、もう1級取っているでしょう」
「まあ、そうだけど」
ハヤトは、既に大人でもなかなか取れない1級の試験に合格している。飛び抜けた才能を持つハヤトがおかしいのだが、オリビアは闘志を燃やさずにはいられない。
「私も早く1級を取りたいの」
「…相変わらず負けず嫌いだね」
「私は、あなたに勝つためなら努力を惜しまないわ」
「そうか。じゃあ、頑張ってもらおう」
ハヤトはニヤリとし、突然オリビアの背後に回り込んで彼女を抱きしめた。