紫苑くんとヒミツの課外授業
1. 一筋の光
私・水瀬 咲来は、幼い頃からいつも、双子の妹・聖来と比べられてきた。
聖来は、目がパッチリとしていてお人形さんみたいに可愛くて。学校の成績も優秀で、何でも器用にこなす。
反対に姉の私は聖来と比べて目が小さく地味な顔つきだからか、ブスだとよく言われる。双子なのに、ちっとも似ていない。
そのうえ私は不器用だし、学校の成績もあまり良くないから、小さい頃からしょっちゅう親に叱られてきた。
『咲来! 何なの、このテストの点数は!』
『なんでこんなこともできないの?! ほんとにあなたは、ダメな子ね』
顔を真っ赤にさせた母の怒鳴り声が、家中に響く。
これでも、私なりに頑張っているつもりなんだけどな。
幼稚園くらいまでは、まだ平等に可愛がってもらっていたけれど。
小学生になった頃から徐々に、私と聖来との間に能力の差が出てきて。
『聖来は、本当にできる子ね。誰かさんと違って優秀で、ママも嬉しい』
学校のテストも、ピアノや英会話のお稽古も。褒められるのは、いつも聖来だった。
そして両親……特に母は、いつしか聖来ばかりを可愛がるようになった。
『あーもう、邪魔邪魔! 咲来がいると聖来の勉強の邪魔になるから。あなたは、家の外へ行ってなさい』
小学生の私は母に腕を掴まれ、無理やり子供部屋から家の外へと追い出される。
『いーい? 咲来、お夕飯まで絶対家に帰ってきちゃダメよ?』
『……わかった』
小学校高学年になる頃には、優秀な聖来の勉強の邪魔になるからと、家の外へと追いやられることが増えた。
私はただ、自分の勉強机で問題集に取り組んでいただけなのに。
私の存在自体が、あの家では邪魔なのだろうか。
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