紫苑くんとヒミツの課外授業
滝川くんのありえない提案に、私は金魚みたいに口をパクパクさせてしまう。
「聖来たちを見返すって、そんなの……無理だよ」
しかも、勉強でだなんて。今まで一度も聖来に勝ったことないのに。
「大丈夫。俺がこれから毎日、水瀬さんに勉強教えるからさ」
「そんな。滝川くんに悪いよ」
「ううん。悪くない。俺が、水瀬さんと一緒に頑張りたいなって思ったから。一人より、二人のほうがもっと頑張れるでしょ?」
滝川くん……。
「それとも水瀬さんは、ずっとこのままお母さんたちに言われたままで良いの? 悔しくないの?」
「それは……」
私の脳裏に、母や聖来の顔が浮かぶ。
……悔しくないと言ったら、嘘になる。
このまま聖来たちに言われっぱなしなのは、絶対に嫌だ。
私は、拳をギュッと握りしめる。
それに……やる前から無理だなんて、決めつけたらダメだよね。
そんなことは、期末テストが終わってからいくらでも言えば良い。
私は、滝川くんを真っ直ぐ見据える。
「滝川くん、私……頑張ってみたい。だから、私に勉強を教えて下さい」
「喜んで。それじゃあ、咲来……これから俺と一緒に頑張ろう」
「はいっ!」
こうして私は、来月の期末テストに向けて滝川くんに勉強を教えてもらうことになったのだった。