紫苑くんとヒミツの課外授業
「え?!」
わ、私が……紫苑くんの唇に触れるの?
私が戸惑っていると、紫苑くんが目を閉じる。
メガネのレンズ越しでも分かる。紫苑くんのまつ毛はボリュームがあって、すごく長い。
「さーくーら。ほら、早くして?」
「う……」
紫苑くんに、そんなふうに言われたら……。
やるしかないじゃない。
私はドキドキしながら、少し震える人差し指で紫苑くんの唇にそっと触れた。
「とっ、取れたよ」
「ありがと」
紫苑くんが、私だけに向けてニッコリと微笑んでくれる。
それが、さっきからとてつもなく嬉しくて。
どうしよう。紫苑くんのこの素敵な笑顔を、もっと見たいと思ってしまった。
それから少し、英語の勉強をして。
今日の勉強を終えた私たちが昇降口まで行くと、外はザーザーと雨が降っていた。
先週梅雨入りしたけれど、今朝は晴れていたから。うっかり傘を持ってくるのを忘れてしまった私。
「どうしよう。傘持ってきてないのに」
雨が止むまで、もう少し学校に残っていようかな。
「あの、紫苑くん。私……」
私が雨宿りしていこうと思っていることを言おうとすると、紫苑くんが隣で青色の折りたたみ傘を広げる。