紫苑くんとヒミツの課外授業
「咲来は、家の車が迎えに来るの?」
「いや。私は……徒歩通学だから」
聖来はいつも家のリムジンで送迎してもらっているけど、なぜか私だけそれを許してもらえていない。
母親が言うには、『贅沢はダメ。あくまでも、普通の中学生らしく生活しなさい』とのこと。
「そっか。それなら、俺と一緒だな」
紫苑くんが、私のほうへと傘を差しかけてくる。
「紫苑くん?」
「咲来。もし傘を忘れたのなら、良ければ俺の傘に入ってく?」
「えっ、いいの?」
「ああ。雨宿りしていたら、帰るのもっと遅くなっちゃうだろ?」
「それじゃあ……お願いします」
こうして私は、紫苑くんの傘に入れてもらうことになったのだが──。