紫苑くんとヒミツの課外授業
『寒い……』
1月下旬。今にも雪が降り出してきそうな、寒空の下。
コートを羽織ってこなかった私は、ブルブルと身体を震わせながらある場所へと向かう。
──ピンポーン。
『はーい。って、あらあら。サクちゃん、いらっしゃい』
私がインターホンを鳴らし家の中へと入ると、玄関先で笑顔で迎えてくれたのは母方の祖母。
『ごめんね、おばあちゃん。いきなり来てしまって』
『良いのよ。外、寒かったでしょう? さあ、早く中に入りなさい』
『ありがとう』
祖母は私の家から徒歩10分ほどの所に住んでいるので、家を追い出されると私はいつもそこへ通うようになった。
『サクちゃん、焼き芋あるけど食べる?』
『うんっ!』
祖母の家の暖かいコタツに入りながら、私は熱々の焼き芋をフーフーしながら食べる。
『美味しい? サクちゃん』
『うん。すっごく甘くて美味しい』
寒い日に食べる焼き芋は、本当に最高。
『それじゃあ、おばあちゃんの分も半分あげる』
『えっ、いいの? ありがとう!』
おばあちゃんは、私が突然家に押しかけても、いつも何も言わずに温かく迎え入れてくれて。
母にキツい言葉を投げかけられた悲しさと、おばあちゃんの昔から変わらない優しさに、私は涙が出る。
『……ぐすっ』
『どうしたの? サクちゃん』
『……っうう。ママに……私は邪魔だって言われたの。私はいらない子なのかな?』
『まぁ。あの子ったら、自分の娘に何てことを……ごめんね、サクちゃん』
おばあちゃんが、私をぎゅっと抱きしめてくれる。