紫苑くんとヒミツの課外授業
……ち、近い。
学校の校門を出て、私と紫苑くんは小さな折り畳み傘の中で肩を寄せ合うようにして歩く。
まさか、紫苑くんと相合傘をすることになるなんて思ってもみなかった。
「咲来、もっとこっち来て。濡れるだろ」
私が少しでも紫苑くんと距離を取ろうと彼から離れようとするとすぐにバレてしまい、紫苑くんのほうへと腕をぐいっと引き寄せられてしまう。
きゃーっ。
「ごっ、ごめん!」
その際に私の肩が紫苑くんの腕に当たってしまい、私は慌てて謝る。
さっきから私の心臓は、尋常じゃないくらいにバクバクとうるさくて。
こんなに距離が近かったら、私の心臓の音が紫苑くんに聞こえちゃいそうだよ……っ。
俯いていた顔を上げると、雨はまだ止みそうになくて。
ザーザーと降りしきる雨の音が、この心音を隠してくれますように。
そう思いながら私は、学校から家までの道を歩いた。