紫苑くんとヒミツの課外授業
「わたしに謝れって、何様のつもり?」
聖来に射るような眼差しで見つめられ、私はハッとする。
しまった。言いすぎた。だけど、聖来のことだからこのあとに続く言葉はきっと……。
「ほんと、ムカつく。咲来ちゃんのくせに生意気なんだけど」
「……っ」
やっぱり。聖来は、私の言ったことなんかちっとも身にしみてなどいない。この子に、謝る気なんて全くないんだ。
これでも私は聖来の姉なのに、なんて無力なのだろう。
それよりもまずは姉として、紫苑くんに謝らないと。
「ごめんなさい、紫苑くん。妹が失礼なことを言って。元はと言えば昨日、私が傘を忘れたせいでこんなことに……」
「なんで、咲来が謝るの? 悪いのは全部コイツらだろ?」
今まで見たことがないほど、怒りを顕にした紫苑くんが教壇の前に行き、教卓をバン! と叩いた。
「なぁ、お前ら。いい加減にしろよ」
普段は無口な紫苑くんの明らかに怒っていると分かる声色に、教室中の空気が一瞬で凍った。
「あのなぁ、中学生にもなって皆でこんなガキっぽいことしてて楽しい? 恥ずかしくないの?」