紫苑くんとヒミツの課外授業
「あの。紫苑くん、ありがとう」
「ううん。俺は、咲来の友達だから。友達として、当然のことをしただけだよ。あと……咲来、よくやったな」
「え?」
「あの聖来によく言ってくれたよ。咲来が俺のこと、あんなふうに言ってくれて嬉しかった」
紫苑くんが、私の頭の上にポンッと手のひらをのせてくれる。
「あのときは私、どうしようもなく腹が立って。無我夢中で……」
今までは聖来に何か嫌なことを言われても、ほとんど言われるがままだったけど。
今日初めて彼女にハッキリと言い返して、少しだけ胸の辺りがスッキリしたような気がする。
「ううん。私こそ、皆の前で言ってくれて本当にありがとう。それと……ごめんね、紫苑くん。
「えっ、何が?」
「昨日、紫苑くんの家のことを聞いてしまって」
「ああ。もしかして、俺がメッセージの返事をしてなくて気にさせてしまった?」
私は素直に頷く。
「ごめん。別に怒ってたからとかじゃなくて。メッセージ見てすぐに寝落ちしてしまって、返せてなかっただけなんだ」
そうだったんだ。良かった。
紫苑くんに嫌われていないと分かり、内心ホッとする私。
「こら、あなたたち! そんなところに立ってないで、早く席に着きなさい。SHR始めるわよ」
「はーい」
担任の先生が教室にやって来て、私をはじめクラスメイトたちは急いで席に着く。
ふと見えた教室の窓の外の青空が、いつもよりも少し綺麗に見えた気がした。