紫苑くんとヒミツの課外授業
「本当にごめん。お詫びに、勉強でも何でも教えるから」
「何でも? それじゃあ……紫苑くんの好きな食べ物は?」
「えっ。俺の好きな食べ物?」
予想外の質問だったのか、紫苑くんは一瞬ポカンとする。
「私、紫苑くんのことももっと知りたくて」
「そうだなぁ。俺はラーメンと、パンケーキとか甘いものが好きだよ。だから、この前咲来が作ってきてくれたクッキーも好き」
「えっ」
心臓がドキッと大きく跳ねる。
自分のことを、好きだと言われたわけじゃないのに。なんだか妙に照れくさくなってしまう。
「じゃあ、紫苑くんの趣味は?」
「読書と映画鑑賞」
それから、血液型や好きな音楽など。紫苑くんは宣言通り、一度も嫌な顔をすることなく私の質問に全て答えてくれた。
紫苑くんが質問に答えてくれる度に嬉しくて。
私の口元はつい緩んでしまう。
でも、いつからだろう。こんなふうに勉強だけでなく、紫苑くんのことも教えて欲しいと思うようになったのは……。