紫苑くんとヒミツの課外授業
だって、目の前にいる紫苑くんは、倒れた拍子でだろうか。
黒縁メガネが床に落ち、いつもは長い前髪で覆われている左目が見え、彼の素顔が露になっていたから。
「うそ……かっこいい」
初めて見る紫苑くんの素顔は、目がくっきりと大きくて。まるで、彫刻のように整った顔立ちをしていた。
まさか紫苑くんが、こんなにもイケメンだったなんて。
「咲来、大丈夫だった?!」
図書室の床から起き上がり、すぐに私のことを気にかけてくれた紫苑くんに私はハッとする。
そっ、そうだ。のんきに紫苑くんに見とれている場合じゃない。
「私は大丈夫。それより、私のせいでごめんなさい」
私は床に落ちていた紫苑くんの眼鏡を拾い、彼に渡す。
「ありがとう。咲来に怪我がなくて、良かったよ」
私の手から眼鏡を受け取ると、紫苑くんはサッと前髪で左目を隠し、また眼鏡を掛けてしまう。
「あの、紫苑くん。その眼鏡……」