紫苑くんとヒミツの課外授業
私の日課。それは、教室に飾ってあるお花の水やりをすること。
お花の水やりは本来は日直の仕事だけど、みんな忘れてしまっているのか、今までの日直の人は誰も鉢植えに水やりをしていない。
日に日に弱っていく姿を見ていられなくなった私は、率先して毎朝水やりをするようになった。
「おはよう。今日も外はいいお天気だよ」
毎朝花に声をかけながら水やりを続けていると、萎れていたのが少しずつ元気になっていくのが分かって嬉しくなった。
今では綺麗な赤い花を咲かせ、私を日々癒してくれている。
「ふふ。可愛いなぁ」
「……おはよ」
「ひゃ!?」
葉をつついていると、突然後ろから誰かに声をかけられ、私は肩がビクッと跳ねる。
振り返ると、そこに立っていたのはクラスメイトの滝川 紫苑くん。
滝川くんはサラサラの黒髪に、レンズが少し分厚めの黒縁メガネを掛けていて。左目は、いつも長い前髪で覆われている。
無口であまり目立つタイプではないけれど、成績はいつも学年トップの秀才だ。
「おっ、おはよう。滝川くん」
もしかしてさっき一人で花に向かって喋ってるところ、見られた!?