乳房星(たらちねぼし)−1・0

【もし君を許せたら】

(ゴーッ…)

時は流れて…

1月31日の夕方4時頃であった。

A班のメンバーたちが乗っている専用機が大阪伊丹国際空港に到着した。

A班のメンバーたちは、専用機から降りたあとタラップ下に停まっているJR西日本バスのロゴ入りの特大バスに乗り込んだ。

(ブロロロロロ…)

夕方4時半頃であった。

A班のメンバーたちが乗り込んだ特大バスが大阪伊丹国際空港から出発した。

バスは、阪神高速道路を通って大阪市内へ向かった。

バスは、夕方6時10分頃に大阪市中央区城見《おおさかちゅうおうくしろみ》にあるテレビ局の正面玄関前に到着した。

バスが到着したあと、付き人軍団の男たち3000人がバスのまわりを取り囲んだ。

バスのドアが開いたあと、A班のメンバーたちがバスから降りた。

その後、A班のメンバーたちは付き人軍団の男たちに護《まも》られる形で館内に入った。

館内に入ったあと、テレビ局のスタッフさんたちと一緒に楽屋へ移動した。

2月1日の午前0時から日曜日昼のディベート番組の大量収録が48時間に渡って行われる予定である。

本来出演する予定だった愛媛県出身の元グラビアアイドルの女優さんがスケジュールの関係で出演できなくなったので、急きょ私が出演することになった。

その頃であった。

B班のメンバーたちは、プリンスエドワード島の本籍地の家でメイン事業の運営と私のオルドビス作り…

C班のメンバーたちは、プレタ…

D班のメンバーたちは、フーヅ…

…のお仕事に取り組んでいた。

時は、夜7時20分頃であった。

ところ変わって、テレビ局の楽屋にて…

ディレクターチェアにこしかけている私は、番組で討論されるテーマの資料を読みながらどこで意見を述べるかなどのチェックをしていた。

ゆかさんは、水銀の血圧計を使って私の血圧測定をしていた。

(ピピピピ…)

この時、私の右わきにはさんでいたオムロンの電子体温のアラーム音が鳴った。

私は、電子体温を取り出したあとゆかさんに渡した。

ゆかさんは、チェックシートに体温を記入したあと『正常です。』と言うた。

私は、ひとことも言わずに討論テーマの資料を読んでいた。

このあと、A班のメンバーたちは仕出し弁当で夕食を摂った。

スタジオ入りは、深夜11時半頃の予定である。

(ゴーッ…)

さて、その頃であった。

大阪伊丹国際空港に別の専用機が到着した。

到着した専用機の中からイナ姐《ねえ》はんとドナ姐《ねえ》はんがタラップを通って降りた。

イナ姐《ねえ》はんとドナ姐《ねえ》はんは、タラップ下に停まっているJR西日本バスのロゴ入りの特大バスに乗り込んだ。

それから30分後にイナ姐《ねえ》はんとドナ姐《ねえ》はんが乗り込んだ特大バスが大阪伊丹国際空港から出発した。

バスは、阪神高速道路を通ってテレビ局へ向かった。

夜8時50分頃に、特大バスがテレビ局の正面玄関に到着した。

その後、付き人軍団の男たちがバスを取り囲んだ。

同時に、バスのドアが開いた。

イナ姐《ねえ》はんとドナ姐《ねえ》はんは、付き人軍団の男たちに護《まも》られる形で館内に入った。

またところ変わって、楽屋にて…

ディレクターチェアに座っている私は、討論テーマの資料に赤いサインペンで意見を述べる箇所《かしょ》に印を入れていた。

A班のメンバーたちは、ひとことも言わずにお仕事をしていた。

この時、ゆかさんがゆきさんに声をかけた。

「ゆき。」
「(ゆきさん、つらそうな声で言う)なあにゆかねーちゃん。」

ゆかさんは、けわしい声でゆきさんに言うた。

「あんた、これからどないすんねん?」
「どないすんねん…って…」
「あんた、1月20日頃から具合が悪い顔をしているみたいね~」

ゆかさんの問いに対して、ゆきさんはつらそうな声で『ちょっと…寝不足気味なの…』と答えた。

ゆかさんは、けわしい声でゆきさんに言うた。

「それだけじゃないでしょ!!…風香《フー》ちゃんから聞いた話だけど…あんた、1月22日の夜に吐血したよね…」
「うん。」
「その翌々日に、大量のオウトをしたよね。」
「うん。」

ゆきさんは、ひとテンポおいてからゆかさんに対して『寝ればなおるわよ~』と言うた。

ゆかさんは、ゆきさんに対してものすごくけわしい声で言うた。

「寝れば治るわけないでしょ!!…ここ10日の間、あんたの様子をみたけど…ジンジョウじゃないわよ!!」

ゆかさんは、子守女《こもりめ》さんたちと一緒に雑用をしている風香《フー》ちゃんに声をかけた。

「風香《フー》ちゃん!!」
「はい。」
「この10日の間のゆきの様子はどうだったの!?」
「1月20日頃から、先生の具合が悪かったことは知ってます…でも…たしか、神戸のホテルに宿泊した夜から…おかしかった…ようです。」

ゆりさんは、困った声で言うた。

「その日はたしか、徳島のお母ちゃんの法要に行ったわね…その日の夜からゆきは具合が悪かったのね。」
「はい…先生はそれまでおだやかでした…しかし…急にこわい顔でわたしに『お茶をおいれして…』と言いました…それからもずっと…先生はこわい顔でいました。」

この時、ゆいさんが『思い出したわ…まさかとは思うけど…』と言うてからこう言うた。

「うちのジョシコー時代に6年間同じクラスにいた…神子森《みこのもり》なお美ちゃんがそうだったわよ…あの子はたしか…高3の卒業式の翌日に…亡くなったのよ…2月の登校日に…ヒンパンにオウトを起こしたのよ…卒業式の日に…ものすごくこわい表情を浮かべていたわ…その翌日に…自宅で暴れまわった末に倒れたのよ…その後…亡くなったの…なお美ちゃん…くも膜下出血で亡くなったのよ!!…なお美ちゃんは…抱え込みやすい性格だったのよ…亡くなる一年前に…静岡へ嫁いたお姉さんが…赤ちゃんを誘拐した事件でケーサツに逮捕されたことを筆頭に…家庭内で次々と不幸事に見舞われたのよ…高2の終了式の翌日にオウトを繰り返すようになったのよ…それで…」

この時、ゆきさんが『やめて!!』と叫んだあとその場に座り込んだ。

座り込んだゆきさんは『頭がいたい…』と言いながら泣いた。

風香《フー》ちゃんは、座り込んだゆきさんの両肩を抱いた。

ゆりさんは、ものすごく心配げな表情でゆきさんに言うた。

「ゆき、手遅れにならないうちに医者に行った方がいいよ…うちの知人が働いている病院に検診の予約を手配しておいたから…それと…ゆきがしていたお仕事の一部を風香《フー》ちゃんと順子《よりこ》さんなどに分散して引き継ぎをするのよ。」

ゆかさんは、ものすごくつらい声でゆきさんに言うた。

「ゆき…今までごくろうさまでした…」
「ゆかねーちゃん。」
「2月以降、うちらはより多忙な日々がつづくのよ…その中でゆきが倒れたら困るのよ。」
「分かってるわよ…」
「あんたも今までつらかったね…ホンマにすまなかったわ…かんにんしてや…」
「ゆかねーちゃん。」

ゆりさんは、つらい声でゆきさんに言うた。

「それともうひとつ話があるけど…哲人《てつと》が新宮市《なんきしんぐう》にある身元引受人の家にいると言う話しを聞いたわよ…ゆきはどないすんねん?」
「(ゆきさん、つらい声で言う)どないすんねんって?」
「哲人《てつと》と一緒に母子《おや子》でもう一度暮らしていこうと言う気はないの?」
「分からない…」
「分からないのね…それともう一人…北海道胆振東部《いぶりのいなか》へ帰った明憲《もとダンナ》の娘…沙都水《さとみ》がこどもふたり連れてリコンしたみたいよ…」
「せやからどないするか分かんないわよ!!」
「ゆき…ごめんね…かんにんや…」

ゆかさんは、けわしい声でゆきさんに言うた。

「ゆき、早く引き継ぎをしてよ!!うちらは時間がないのよ!!」
「わかった。」

このあと、ゆきさんは自分がしていたお仕事を風香《フー》ちゃんと順子《よりこ》さんに分散して引き継ぐ作業を急いで始めた。

ゆきさんは、2月1日の朝6時を持ってイワマツグループを退職することになった。

退職金1億5000万円は、後日ゆきさんの口座に振り込まれる予定である。
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