乳房星(たらちねぼし)−1・0
【雨のレクイエム】
(ゴォーゴォーゴォーゴォーゴォーゴォーゴォー!!ドザー!!ドザー!!)
時は、9月17日の夕方4時頃であった。
この日、大型で非常に強い台風が西日本にやって来た。
中心付近の最大風速は90ノット(45メートル)…
最大瞬間風速は120ノット(60メートル)…
…の非常に凶暴な台風である。
四国の瀬戸内側も朝から暴風を伴った非常に激しい大雨が降りしきっていた。
この時間、九州地方で記録的短時間大雨情報が連続して発表された…
西日本のあちらこちらで土砂災害・浸水害・川が氾濫する危険度が急激に高まった。
ゆきさんが入院している今治市喜田村《きたむら》の済生会病院周辺も、浸水害の危険度が急激に増した。
病院の近くを流れている川の水位が急激に上昇したので、洪水発生の危機が差し迫っていた。
ところ変わって、ゆきさんが入院している個室病棟《びょうしつ》にて…
びょうしつには、ゆきさんと奈保子《なおこ》がいた。
ゆきさんは、少しずつだが体力が弱り始めた。
この最近、ゆきさんは出された食事を食べなくなった…
または、食べても残してばかりいた…
九州北部豪雨が発生した7月6日を境に、ゆきさんはネクラな表情を浮かべるようになった。
奈保子《なおこ》は、ネクラな表情を浮かべているゆきさんに声をかけた。
「義母《おかあ》さま…義母《おかあ》さま…」
「なによぅ〜」
「もうすぐ、お夕食ですよ。」
「食べたくない…」
「食べたくないって?」
ゆきさんは、ものすごくひねた表情で言うた。
「味つけがうすすぎるから食べれない…」
奈保子《なおこ》は、困った表情でゆきさんに言うた。
「味つけがうすすぎるのはわかるけど、病院のひとは義母《おかあ》さまの体調にあわせて…」
ゆきさんは、ものすごくやっきな声で言うた。
「言わなくても分かってるわよ!!…せやけど、食べれんものは食べれん!!」
奈保子《なおこ》は、ものすごく困った声でゆきさんに言うた。
「それじゃあ、どうしたいのですか?」
ゆきさんは、ものすごくネクラな表情で答えた。
「うちは…このまま…静かに人生を終えたいの…」
「義母《おかあ》さま!!」
「もういいのよ…」
ゆきさんは、ひと呼吸おいたあとひねた声で言うた。
「うちは、ちいちゃい時からわがままばかりこねて生きてきた…うちひとりのわがままのせいで、ゆりねーちゃんとゆかねーちゃんとゆいねーちゃんとゆなねーちゃんとゆみねーちゃんはガマンを強いられた…七五三のお祝いは…うちは豪華なプレゼントを受け取った…おねーちゃんたちの七五三祝いはシッソなものばかりだった…」
「そんなことありません…おばさまたちも七五三のお祝いは…」
ゆきさんは、奈保子《なおこ》に対して怒った声で『おねーちゃんたちはシッソなものしかもらえんかった!!』と言うてさえぎったあと、ものすごくネクラな声で言うた。
「親類たちは、おねーちゃんたちの七五三祝いをシッソなもので間に合わせたのよ!!」
「義母《おかあ》さま〜」
「うちは、親類たちから『チョウよハナよ…』と愛でられてばかりいたので、社会に順応しない大人になったのよ!!…ほしいものがあったら、こうてもらうまでワーワーワーワー泣き叫んだ…うちはないたもん勝ちしてばかりいたから、おねーちゃんたちから反感を受けたのよ!!」
「義母《おかあ》さま!!落ちついてください!!」
「落ちついてなんかいられないわよ!!」
(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)
ひどく怒り狂ったゆきさんは、着ていたパジャマのトップスを思い切り破いた。
破れたトップスの中からブラジャーをつけていない乳房があらわになった。
ゆきさんは、ものすごくネクラな声で奈保子《なおこ》に言うた。
「アタシひとりがわがままをこねたせいで…親類の子たちからボコボコにどつき回されたことがあったのよ!!」
「義母《おかあ》さま…」
「アタシひとりのせいで、楽しみにしていたテレビ番組が見れなかった子がいたのよ!!」
「義母《おかあ》さま!!落ちついてください!!」
「ふざけるな!!」
(ガシャーン!!)
思い切りブチ切れたゆきさんは、テーブルに置かれていた花びんを近くのカベにぶつけた。
花びんがこなごなにくだけたと同時に、生けてた花がつぶれた。
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!)
この時であった。
近くを流れている川で不気味な水音が響いた。
同時に、川の水があふれ出した。
ゆきさんは、ものすごくネクラな声で奈保子《なおこ》に言うた。
「火曜日…火曜日が一番イヤだった…うちはあの時…NHK(総合テレビ)で火曜日の夜7時半のアニメをよく見ていたのよ…何月何日の火曜日だったのかおぼえてへんけど…(親類の男の子)くんが見たい番組が始まる時に『(アニメ)!!』と言うてわがままこねたのよ!!…うちは(アニメ)をみしてもろたけど…30分後に…(親類の男の子)くんが…うちをグーで殴りつけたのよ…止めに入ったゆなねーちゃんとゆみねーちゃんも殴られた…ゆみねーちゃんはうちの100倍殴られたのよ!!」
「義母《おかあ》さま!!落ちついてください!!」
「キーッ!!」
思い切りブチ切れたゆきさんは、部屋中を暴れまわった。
「やめて!!やめて!!」
奈保子《なおこ》は、必死になってゆきさんを止めた。
この時、哲人《てつと》が病室に戻って来た。
哲人《てつと》は、ものすごく怒り狂った声で言うた。
「非常事態が発生したぞ!!富田校区全域に緊急安全確保が発令されたぞ!!」
必死になってゆきさんを止めている奈保子《なおこ》は、泣き叫ぶ声で言うた。
「あなた!!こっちも非常事態が発生したのよ!!」
「そんなことよりも緊急安全確保が発令されたのだぞ!!周りが水びたしになっているのだぞ!!」
「分かってるわよ!!それよりも義母《おかあ》さまが暴れ出したのよ!!」
「そんなことよりも、一階のフロアに水が入ったのだぞ!!」
「義母《おかあ》さまはどうするのよ!!」
この時、近くの川からあふれ出た大量の水が病院の一階のフロアに侵入した。
たいへんだ…
病院の一階が水に浸かった…
(ゴーッ!!ゴーッ!!)
同時に、より恐ろしい暴風音《ぼうふう》がふきあれた。
たいへんだ…
どうすればいいのだ…
時は、9月17日の夕方4時頃であった。
この日、大型で非常に強い台風が西日本にやって来た。
中心付近の最大風速は90ノット(45メートル)…
最大瞬間風速は120ノット(60メートル)…
…の非常に凶暴な台風である。
四国の瀬戸内側も朝から暴風を伴った非常に激しい大雨が降りしきっていた。
この時間、九州地方で記録的短時間大雨情報が連続して発表された…
西日本のあちらこちらで土砂災害・浸水害・川が氾濫する危険度が急激に高まった。
ゆきさんが入院している今治市喜田村《きたむら》の済生会病院周辺も、浸水害の危険度が急激に増した。
病院の近くを流れている川の水位が急激に上昇したので、洪水発生の危機が差し迫っていた。
ところ変わって、ゆきさんが入院している個室病棟《びょうしつ》にて…
びょうしつには、ゆきさんと奈保子《なおこ》がいた。
ゆきさんは、少しずつだが体力が弱り始めた。
この最近、ゆきさんは出された食事を食べなくなった…
または、食べても残してばかりいた…
九州北部豪雨が発生した7月6日を境に、ゆきさんはネクラな表情を浮かべるようになった。
奈保子《なおこ》は、ネクラな表情を浮かべているゆきさんに声をかけた。
「義母《おかあ》さま…義母《おかあ》さま…」
「なによぅ〜」
「もうすぐ、お夕食ですよ。」
「食べたくない…」
「食べたくないって?」
ゆきさんは、ものすごくひねた表情で言うた。
「味つけがうすすぎるから食べれない…」
奈保子《なおこ》は、困った表情でゆきさんに言うた。
「味つけがうすすぎるのはわかるけど、病院のひとは義母《おかあ》さまの体調にあわせて…」
ゆきさんは、ものすごくやっきな声で言うた。
「言わなくても分かってるわよ!!…せやけど、食べれんものは食べれん!!」
奈保子《なおこ》は、ものすごく困った声でゆきさんに言うた。
「それじゃあ、どうしたいのですか?」
ゆきさんは、ものすごくネクラな表情で答えた。
「うちは…このまま…静かに人生を終えたいの…」
「義母《おかあ》さま!!」
「もういいのよ…」
ゆきさんは、ひと呼吸おいたあとひねた声で言うた。
「うちは、ちいちゃい時からわがままばかりこねて生きてきた…うちひとりのわがままのせいで、ゆりねーちゃんとゆかねーちゃんとゆいねーちゃんとゆなねーちゃんとゆみねーちゃんはガマンを強いられた…七五三のお祝いは…うちは豪華なプレゼントを受け取った…おねーちゃんたちの七五三祝いはシッソなものばかりだった…」
「そんなことありません…おばさまたちも七五三のお祝いは…」
ゆきさんは、奈保子《なおこ》に対して怒った声で『おねーちゃんたちはシッソなものしかもらえんかった!!』と言うてさえぎったあと、ものすごくネクラな声で言うた。
「親類たちは、おねーちゃんたちの七五三祝いをシッソなもので間に合わせたのよ!!」
「義母《おかあ》さま〜」
「うちは、親類たちから『チョウよハナよ…』と愛でられてばかりいたので、社会に順応しない大人になったのよ!!…ほしいものがあったら、こうてもらうまでワーワーワーワー泣き叫んだ…うちはないたもん勝ちしてばかりいたから、おねーちゃんたちから反感を受けたのよ!!」
「義母《おかあ》さま!!落ちついてください!!」
「落ちついてなんかいられないわよ!!」
(ビリビリビリビリビリビリビリビリビリビリ!!)
ひどく怒り狂ったゆきさんは、着ていたパジャマのトップスを思い切り破いた。
破れたトップスの中からブラジャーをつけていない乳房があらわになった。
ゆきさんは、ものすごくネクラな声で奈保子《なおこ》に言うた。
「アタシひとりがわがままをこねたせいで…親類の子たちからボコボコにどつき回されたことがあったのよ!!」
「義母《おかあ》さま…」
「アタシひとりのせいで、楽しみにしていたテレビ番組が見れなかった子がいたのよ!!」
「義母《おかあ》さま!!落ちついてください!!」
「ふざけるな!!」
(ガシャーン!!)
思い切りブチ切れたゆきさんは、テーブルに置かれていた花びんを近くのカベにぶつけた。
花びんがこなごなにくだけたと同時に、生けてた花がつぶれた。
(ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!)
この時であった。
近くを流れている川で不気味な水音が響いた。
同時に、川の水があふれ出した。
ゆきさんは、ものすごくネクラな声で奈保子《なおこ》に言うた。
「火曜日…火曜日が一番イヤだった…うちはあの時…NHK(総合テレビ)で火曜日の夜7時半のアニメをよく見ていたのよ…何月何日の火曜日だったのかおぼえてへんけど…(親類の男の子)くんが見たい番組が始まる時に『(アニメ)!!』と言うてわがままこねたのよ!!…うちは(アニメ)をみしてもろたけど…30分後に…(親類の男の子)くんが…うちをグーで殴りつけたのよ…止めに入ったゆなねーちゃんとゆみねーちゃんも殴られた…ゆみねーちゃんはうちの100倍殴られたのよ!!」
「義母《おかあ》さま!!落ちついてください!!」
「キーッ!!」
思い切りブチ切れたゆきさんは、部屋中を暴れまわった。
「やめて!!やめて!!」
奈保子《なおこ》は、必死になってゆきさんを止めた。
この時、哲人《てつと》が病室に戻って来た。
哲人《てつと》は、ものすごく怒り狂った声で言うた。
「非常事態が発生したぞ!!富田校区全域に緊急安全確保が発令されたぞ!!」
必死になってゆきさんを止めている奈保子《なおこ》は、泣き叫ぶ声で言うた。
「あなた!!こっちも非常事態が発生したのよ!!」
「そんなことよりも緊急安全確保が発令されたのだぞ!!周りが水びたしになっているのだぞ!!」
「分かってるわよ!!それよりも義母《おかあ》さまが暴れ出したのよ!!」
「そんなことよりも、一階のフロアに水が入ったのだぞ!!」
「義母《おかあ》さまはどうするのよ!!」
この時、近くの川からあふれ出た大量の水が病院の一階のフロアに侵入した。
たいへんだ…
病院の一階が水に浸かった…
(ゴーッ!!ゴーッ!!)
同時に、より恐ろしい暴風音《ぼうふう》がふきあれた。
たいへんだ…
どうすればいいのだ…