乳房星(たらちねぼし)−1・0

【雨の慕情】

(ザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザーザー…ゴーッ…)

時は、夜9時過ぎであった。

私が乗っている全日空機が福岡空港に到着した。

この時、福岡市内は雨が降っていた。

大陸からのびている前線の雲がかかっている関係で、雨が降っていた。

ショルダーバッグを持って飛行機から降りた私は、地下鉄に乗って中洲川端駅へ向かった。

中洲川端駅で電車を降りた私は、ショルダーバッグを持って地上に上がった。

(ゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロゴロ!!ドザー!!)

私が地上に上がった時であった。

1時間に30ミリの雷を伴った激しい雨が降り出した。

激しい雨に打たれている私は、ずぶ濡れになりながらもドナ姐《ねえ》はんを探し回った。

しかし、ドナ姐《ねえ》はんはどこにもいなかった。

そうこうして行くうちに、私は人気《ひとけ》のないところへまた迷い込んだ。

…と同時に、またえげつない現場を目撃した。

日付けが変わって、11月1日の深夜0時半頃だった。

ところ変わって、にしてつ天神駅の北東側にある商店街《アーケード》の裏手の露地にて…

そこは、むかし市場でにぎわっていた通りであったが今はカンサンとしていた。

シャッターには、ラッカーで落書きされたあとがあちらこちらにあった。

この時であった。

私がいる場所から70歩先にあるカード式の電話機が有る電話ボックスに番頭《ばんと》はんがいたのを見た。

やばい…

かくれなきゃ…

私は、公衆電話から50メートル先にあるさびたドラム缶の陰に隠れて様子を見た。

電話ボックスにいる番頭《ばんと》はんは、ものすごく怖い声で受話器ごしにいる相手をおどした。

「オドレマンネンイン!!わしや…竹宮だ!!…オドレはワテの声が聞こえんのか!?…コラ!!オドレはジコーと言う意味が分かってないみたいだな!!…事件のジコーと言うのは、逮捕ではなく起訴の期限だ!!…やかましいクソガキャ!!…名古屋で発生したカップル襲撃事件でオドレがレイプして殺した女性は…飯豊会長《かいちょう》のもと情婦《レコ》だった女だぞ!!…オドレは、飯豊会長《かいちょう》の情婦《レコ》を殺した仲間のリーダーだと言うことは分かってるのだぞ!!…オドレは仲間たちに責任をなすりつけたあと、あちらこちらを逃げ回った!!…その末に、オドレは吉岡組《ヨシオカ》の組長《オヤブン》に助けを求めた…ほんで、ワテらを封じ込めた…この野郎!!…なんや…見のがしてくれだと!!…ほんならカネ作れ!!…1億だ…1億はろたらこらえたる…5000万しか用意できんだと!?…アカン!!1億と言うたら1億だ!!…5000万じゃくて1億作れ!!…」

この時、受話器ごしに舌打ち音が聞こえた。

舌打ちされた番頭《ばんと》はんは、激怒した。

「オドレ御曹司《クソガキ》!!さっき舌打ちしたな!!…ワテに対して舌打ちするとはどう言うことや!?…なんや…バカとはなんや!?」

受話器ごしから『バカをバカと言うたらいかんのか!?』と言う声が響いた。

思い切りブチ切れた番頭《ばんと》はんは、電話機の上に積まれている10円玉を投入口に8枚入れながら言うた。

「なんや御曹司《クソガキ》!!ワテに対してケンカを売る気か!?…しかけたのはテメーの方だ!!…なんや!!払わんだと!?…『バーカバーカ!!』だと!?…この野郎!!ワテのどこがくるくるパーだ!?…ワテの髪の毛にオリバーソースをかけて食うたろかだと!?…ワテの髪の毛はオリバーソースヤキソバか!?…ペヤングだろうかなんだろうがどーでもええわ!!…やかましい!!…おい!!わろとる場合じゃないぞ!!今から24時間以内に1億作れ!!さもなくばどないなるかわかったんやろな…ああ!!」

(ガシャーン!!)

思い切りブチ切れた番頭《ばんと》はんは、電話をガチャーンと切ったあとちびたえんぴつでメモをなぐり書きした。

私は、この時現場からゆっくりと立ち去ったあと大急ぎで逃げた。

どうしょう…

またえげつない現場を見てしまった…

こわい…
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