乳房星(たらちねぼし)−1・0

【だってしょうがないじゃない】

(ゴーッ…)

時は、翌朝8時頃であった。

A・Bの2班のメンバーたちが乗り込んだ専用機が大阪伊丹国際空港から飛び立った。

次回、来日する予定は未定である。

時は、午後1時過ぎであった。

またところ変わって、大番頭《おおばんと》はんの家にて…

家の特大広間にいととまき夫婦の3人がいた。

3人が話し合いをしていた時であった。

ものすごください色のジャージ姿のゆらさんが特大広間にやって来た。

「おかーちゃん、奈保子《なおこ》さんがお越しになられたよ。」
「あっそう…」

このあと、クリーム色のトレンチコート姿で特大サイズの濃いネイビーのサックスバーのスーツケースを持っている奈保子《なおこ》さんが家に入った。

奈保子《なおこ》さんは、ものすごくつらい表情でいとに言うた。

「奥さま。」
「ああ、奈保子《なおこ》さん。」
「すぐに終わりますので、お話を聞いていただけますか?」
「ええ…奈保子《なおこ》さん、スーツケースを持ってどちらに行かれるのですか?」
「うち…先週末…職場に辞表を出しました。」
「辞表を出したって?」
「はい。」
「せっかく就職した会社をなんでやめたのよ?」

いとがものすごくあつかましい声で言うたので、奈保子《なおこ》さんは心苦しい声で答えた。

「うち…資格を取りたいから会社をやめました…理由はそれだけです。」
「資格を取りたいから会社をやめたの?」
「ええ。」
「生保会社《かいしゃ》にいても資格は取れるわよ〜」
「それではダメなのです〜」
「どうしてよ…」
「うちは、ファイナンシャルプランナーの資格がないのに生保会社《かいしゃ》に入ったから大失敗したのです…周りがコーソツ〜ダイソツの証書があればいいと言うからその通りにしたのです…だから大失敗したのです!!」
「大失敗してないわよ…コーソツ〜ダイソツも仕事に必要な資格なのよ~」
「ですから、それがいかんと言うてるのですよ!!…資格もないのに生保会社《かいしゃ》に就職して大失敗したから、資格を取る時間がほしいのです!!」

この時であった。

ださい色のジャージ姿のゆらさんがケーソツな声でいとに言うた。

「奈保子《なおこ》さん、いいんじゃないの?」
「ゆらさん。」
「奈保子《なおこ》さんは、結婚にしばられるのがイヤだったのね。」
「その通りです。」
「せやせや…結婚なんかしない方がいいわよ。」
「もちろんですわ。」
「資格を取りたいと言うたね。」
「ええ…そのために必要なお金を稼ぐために、ワーキングホリデービザを取得しました。」

いとは、おどろいた声で言うた。

「外国へお金を稼ぎに行くって〜」

ゆらさんは、めんどくさい声で言うた。

「おかーちゃん、今どきのこたちはワーキングホリデービザを取って海外へ行く取って…と言うのが多いのよ…」
「お金を稼ぐのだったら、生保会社《かいしゃ》でもできるわよ~」
「おかーちゃんはなにが気に入らんねん!!」
「気に入らないのじゃなくて〜」
「奈保子《なおこ》さんは、温和な環境にい続けたらダメになるからと思ってアクションを起こしたのよ…それのどこがいかんの!?」
「いかんとは言うてないわよ…だけど、その前に…親御さんに…」
「なんでそななめんどいことせなアカンねん…」
「ゆら!!」
「おかーちゃん!!奈保子《なおこ》さんの人生はおかーちゃんのもんじゃあらへん…」
「分かってるわよ〜」
「ほんなら、奈保子《なおこ》さんの思う通りにさせてよ~」
「分かったわよ〜」

奈保子《なおこ》さんは、突き放す声でいとに言うた。

「すみません…1時間後に出発するラピート(南海電鉄特急)に乗る予定があるので…行かせてください…失礼します…」

(ゴロゴロゴロゴロ…)

このあと、奈保子《なおこ》さんは特大スーツケースを持って旅に出た。

いとは、ものすごく不満げな表情で奈保子《なおこ》さんの背中《せな》を見つめた。

(ゴーッ…)

それから2時間後であった。

奈保子《なおこ》さんが乗り込んだ全日空機が関西国際空港から飛び立った。

いとたちに行き先を伝えずに旅に出た奈保子《なおこ》さんは、なにを思いながら窓に写る景色を見つめていたのか?
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