乳房星（たらちねぼし）−１・０

【かんにんや】

（ブロロロロロ…）

時は、夕方６時頃であった。

車両４台は、再び大阪伊丹国際空港に到着した。

100人乗りの特大バスは、専用機につながるタラップ前に到着した。

ヒノクルージングレンジャーのウイング３台は、貨物ヤード付近に到着した。

貨物ヤードでは、このあと積み込み作業が開始された。

イワマツグループの全メンバーたちは、バスを降りたあとタラップを通って専用機に乗り込んだ。

時は、夕方６時20分頃であった。

専用機の中にて…

イワマツグループの全メンバーたちは、子守女《こもりめ》さんたちから配られたお弁当で夕食を摂っていた。

きょうの夕食は、（大阪名物）バッテラの詰めあわせ弁当である。

そんな中であった。

ゆかさんは、ゆりさんに声をかけた。

「おねーちゃん。」
「なあに、ゆか。」
「遥輝《はるき》、おかーちゃんが亡くなったら嫁はん方の実家《いえ》に帰るみたいよ。」
「嫁はん方の実家《いえ》に帰るのね。」

ゆかさんは、のみかけのサントリーウーロン茶をひとくちのんでからゆりさんに言うた。

「桃子《ももこ》のオトンが…近いうちに老健施設《しせつ》からタイキョするみたいよ。」
「なんで？」
「認知症が極度に悪化したのよ。」
「桃子《ももこ》のオトン…そないに悪くなったのね。」
「うん…施設の職員さんたちはもうめんどうみれんと言うてサジ投げたわよ。」
「ほな、家族はどないするん？」
「家族みんなでメンドー見るしかないのよ…遥輝《はるき》は、近いうちに、介護を理由に会社をやめると決めたわよ。」
「しゃーないやん…湯上谷《ゆがみだに》の家にムコ入りした以上はやらなきゃアカンねん…遥輝《はるき》もついてないね…健介《けんすけ》が家出した…幸《みゆき》がリスカして亡くなった…それに加えて、おかーちゃんが急病で倒れた…そのまた上にゆらが急に家出した…なんやねんもうと言いたいねん…」

お弁当を食べ終えたゆりさんは、お弁当箱のフタを閉じたあと奈保子《なおこ》のことを話した。

「それともう一つ…奈保子《なおこ》のことで、なんらかの動きがあったわよ。」
「えっ？どう言うこと？」
「奈保子《なおこ》、近いうちに湯上谷《ゆがみだに》の本家に帰るかもしれへんって…」
「なんで？」
「奈保子《なおこ》は、姓名《ミョウジ》は水口《みなくち》だけど、もとはユガミダニコンツェルンのソウスイのマゴちゃんだったのよ…奈保子《なおこ》は赤ちゃんの時に水口《みなくち》の主人の姉夫婦に誘拐されたのよ…身代金目的の誘拐事件を起こした責任を取って、水口《みなくち》の家が尻ぬぐいをする形で奈保子《なおこ》は水口《みなくち》の養女になったのよ…奈保子《なおこ》さんが湯上谷の家の嬢《せけんしらず》と言うのはそういうことよ。」
「そうだったのね。」
「もういいでしょ…明日からはお仕事がたくさんあるのよ…ごはんを食べて…身体を休ませておきましょ…」

ゆりさんは、ゆかさんたち５人きょうだいに言うたあとのみかけのサントリーウーロン茶をのんだ。

（ゴーッ…）

時は、夜８時頃であった。

イワマツグループの全メンバーたちが乗り込んだ専用機が大阪伊丹国際空港から飛び立った。

それから30分後にいとがくも膜下出血による心不全で亡くなった。

イワマツグループの全メンバーたちは、2003年の年明けと同時に超多忙になるので１日も休みはない…