熱愛発覚中
鏡の中の自分から目をそらすと、そこを通り過ぎた。

美しく着飾っている自分が何だか惨めに見えて、もうこれ以上は自分の姿を見たくなかった。

ドレスを脱いで…当てつけみたいにそこら辺に放り投げてやろうかと思ったけれど、チクリと胸が傷んだ。

職業柄なのか牛島さんに選んでもらったからなのかはわからないけれど、そんなことができない自分に嫌気が差して自嘲気味に笑った。

クローゼットからハンガーを取り出すと、そこにドレスをかけてクローゼットの中に入れた。

そして、隠すようにクローゼットのドアを閉めた。

下着も脱いで、ヘアアレンジをしてもらった髪も解くと、バスルームへと足を向かわせた。

もう何もかも全部忘れて、何もかも全部洗い流したい気分だった。

「別々になっているんだ…」

バスルームとトイレは一緒じゃなかった、スイートルームだから当然か。
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