熱愛発覚中
「その子のためにもちゃんと夫と話をするんだぞ」

私のその姿に兄が言った。

「うん、ちゃんと話してみるよ…」

そう返事をした私だけど、本当は怖かった。

でも…いつまでも牛島さんから逃げていると言う訳にはいかない、牛島さんと向きあわないと言う訳にはいかない。

お腹の子のためにも彼との関係にケジメをつけて、これから先のことを考えなければいけない。

やることがあり過ぎて先が思いやられそうだけれど、ひとつひとつを片づけて道を切り開いて前を向こう。

「煮えたぞ」

兄が取り皿に入れた鍋の中身を私の前に置いた。

「ありがとう、兄さん」

私がお礼を言ったら、
「ちゃんと食べて、ちゃんと夫と向きあうんだぞ」
と、兄は言った。

「うん、わかった」

私は返事をすると、
「いただきます」
と、割り箸を手に取った。
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