熱愛発覚中
私たちの間に沈黙が流れる。

「ーー自分が何を言っているのかわかっているのか?」

先に沈黙を破ったのは、牛島さんの方からだった。

「ええ、わかっていますよ」

それに対して、私は言い返した。

「わかっていなかったら言いませんよ」

続けて言った私に、
「…あんたがそう言うヤツだったって言うことを忘れてた」

牛島さんは言った。

私のことを名前じゃなくて“あんた”と呼ばれたのは、あの日以来だろう。

それなのに、チクリ…と私の胸が痛んだのがわかった。

好きな人から名前で呼ばれなかったことがこんなにも悲しいことだなんて…私は本当に彼に恋をしていたんだと思った。

でも…牛島さんから見た私なんて“その程度”の人間なのだろう。

牛島さんは私を見つめると、
「離婚はしない」
と、言った。
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