熱愛発覚中
自分を生んでくれた母親は亡くなったと、いつだったかはわからないが父親から聞かされた。

当然のことながら、まだ幼かった自分は父親の言うことを信じた。

周りの人間は“仕事ばかりで家庭を省みなかったから妻に逃げられた”なんて、そんなひどいことを言って父親のことをバカにしていた…けれど、大人になった今はわかることがある。

「ーー父さんは、俺を守りたかったんだろうな…」

書斎で1人、ウイスキーを嗜みながら幼い日のことを思い出した蓮司は呟いた。

自分には母親は亡くなった、周りには自分が仕事ばかりを優先していた結果故のこと…と説明して、父親は自分を守りたかったのかも知れない。

「俺と血が繋がっていないのに、よくやるよな…」

初めて好きになった人の息子だから…と言えば、それまでかも知れないけれど。

蓮司は自嘲気味に呟いて笑った。
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