熱愛発覚中
「莉理?」

牛島さんに名前を呼ばれて、私は彼に見とれていたことに気づいた。

「そうだね、もう帰ろうか?」

私はちゃんと返事ができていただろうか?

牛島さんと手を繋いだままの状態で公園を後にした。

…何を見とれたんだよ、おい。

顔はいいけど、結婚はその場の勢いだと言っているようなヤツだぞ?

“思い出”と言うパワーワードに危うく心が絆されかけていたせいでこの男に見とれてしまったのかと、自分に呆れた。

改めて自分は人間なんだ、女なんだとそんな当たり前のことを確認させられた。

売り言葉に買い言葉で期間限定の結婚を承諾したくせに、何をやっているんだか…。

結婚はその場の勢いじゃないことをこの1年で証明するんでしょうがと、心の中で自分を鼓舞した。
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